五臓六腑(ごぞうろっぷ)
「門のそとの石段のうえに立って、はるか地平線を凝視し、遠あかねの美しさが五臓六腑にしみわたって、あのときは、つくづくわびしく、せつなかった。」
太宰治の「狂言の神」に出てくる「五臓六腑」という言葉。どちらかといえば書き言葉として目にすることが多く、詩的な表現の中で見かけるこの言葉ですが、実際の意味はどんなものなのでしょうか?この記事では五臓六腑の意味・会話例などを解説します。
五臓六腑の意味とは
五臓六腑は「ごろうぞっぷ」と読み、「からだの中のものすべて」を指します。
また、単純に内臓、内臓の総称、腹の中、心の中などの意味があります。
五臓六腑と言う時には「からだ全身」「体中」、転じて「存在そのもの」「感情の中心」という意味合いで使うことも可能です。
字義どおりの意味を見ると五臓六腑は「五つの内臓と六つのはらわた」です。
五臓は心臓・肺臓・脾臓(ひぞう)・肝臓・腎臓の5つ。六腑は大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦(胃の中・胃の上・膀胱の上で三焦)の6つです。
五臓六腑の由来
五臓六腑の由来は伝統中国医学にあります。
伝統中国医学において、五臓六腑は人間の内臓全体を表す言葉として使われていました。
中国といえば陰陽五行説が有名ですが、五臓六腑はこの五行になぞらえて考えられていたということです。ただし、五行に当てはめると六腑の方が1つ多いことに気づくでしょう。本来は六腑のうち三焦だけは関係臓器がなく、六腑の中に数えられず別区分にすることもあったそうです。
五臓六腑の文章・例文
例文1.疲れ切った五臓六腑に染みわたる
例文2.怒りのあまり五臓六腑が煮えくり返る
例文3.体は元気に見えても、五臓六腑が弱ってきている
例文4.温泉に浸かって、五臓六腑を癒した方が良い
例文5.重厚なオーケストラの演奏が、五臓六腑に響き渡る
体全身や体の内側全部の状態を表す時に使います。また、体全体で感動したり、怒ったり、感じたり、というような表現も可能な言葉です。
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五臓六腑の会話例
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この年末は忙しかったね。毎度のことながら会社の繁忙期が終わると、体の芯までへとへとになるよ。
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まったくだ。埋め合わせの休みがもらえるのがせめてもの慰めだな。せっかくだから今度飲みに行かないか? 年末を乗り切った打ち上げとして。
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そうだな。どうせなら温泉旅行付きなんかどうだ?
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それはいいアイデアだ! 疲れ切った体に温泉、風呂上がりに上手い酒。五臓六腑に染みわたるな。
企業戦士で疲れた体にうまい酒、という状況は、まさに五臓六腑に染みわたりますね。
ちょっとした喜びや怒りではなく、体全身で何かを感じる時に適した言葉なので、頻繁に使う言葉ではないかもしれません。
五臓六腑の類義語
五臓六腑の類義語としてはいくつか挙げられます。
実際的な体を指す言葉としては「全身」「体中」が類義語ですが、自分自身や思いの中心を指して言う時は「心胆」「心髄」なども類義語として適しています。「心の底から」というような意味合いを表現することができます。
五臓六腑まとめ
ここまで、五臓六腑について見てきました。
単純に体の状態についても使うことができ、また体全体で感情を表す時にも使うことができる幅広い意味合いの言葉ですね。