愚者も一得(ぐしゃもいっとく)
「愚者も一得」とは「愚か者が時には妙案を出す喩え」です。そこからどんな人も時には活躍をしたり、役立つ事もあると受け取れます。文字通り、どんな愚かな者でも一つの長所を発揮して、周囲を感心させたり驚かさせるのは十分に可能なのです。それでは「愚者も一得」の解説となります。
愚者も一得の意味とは
「愚者も一得」の意味は以下の通りとなります。
(1)愚か者でも時には役立つ案を出す事。
(2)愚か者が偶には良い考え方をしたり、役立つ知恵を発揮する喩え。
(3)「愚者一得」「愚者にも一得」も同義。
”愚者”は「愚かな者」「ばかもの」「通常の知性や理性を備えていない者」、”一得”は「一つの利点」「ある場合に得な事」で、日頃はまったく役立たない愚かな者が偶には良いアイディアを出すのが「愚者も一得」です。周囲が驚いてしまい思わず発する言葉という感が強く、それぐらい愚者は日常的にはまったく役立っていないのですが、逆に言うなら誰でも時には役立つ事があるという事なのです。ですから政府や自治体や企業が人々からアイディアを募集するのは一種の「愚者も一得」とも受け取れ、建て前としては幅広い意見を募るとなりますが、本音としては愚か者がどんな声を出すのか観察しているのでしょう。万が一でも妙案があれば儲けもので、無ければやはり愚か者に期待をしてはいけないとなるのです。実際の使い方としてはなかなか難しく、相手を見下しているからこそ”愚者”となるので、自らに対して謙遜するように用いる方がかなり無難となります。
愚者も一得の由来
「愚者も一得」の由来は、中国前漢時代の歴史書「史記」の淮陰侯伝に記された一文「智者も千慮に必ず一失あり、愚者も千慮に必ず一得あり」からです。
愚者も一得の文章・例文
例文1.妻を褒めるつもりで愚者も一得と言ったら、女性差別と逆ギレされてその後は必死でフォローして何とか怒りを静めてもらった。
例文2.クラスでダントツに成績が悪い私が正論でいじめっ子を論破したので、他の全員が愚者も一得と驚いたに違いない。
例文3.アメリカや中国ほどの大国になると、世界各国の首脳が集う会議で後進国の首相が何か述べても愚者も一得とすら思っていないだろう。
例文4.「愚者も一得となるのでどうかお願いします」と、部長や課長に何度も頭を下げて提案を聞いてもらうように粘ったが、定時で帰宅する事しか頭にない二人には馬の耳に念仏でまったく効果がなかった。
例文5.退任目前の総理が妙に活動的になったが、これまでの会見無視などの態度から愚者も一得するからと透けて見えてしまう。
様々な愚かな人についての例文となります。
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愚者も一得の会話例
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分かった。ここは俺に任せてくれないか?
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普段は何もしないあなたが一体どうしたの? 本当に任せて大丈夫なの?
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大丈夫、任せてくれ。愚者も一得って言うだろ。普段は情けない姿ばかりだけど、今回は大丈夫だから。
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じゃあお願いしますよ。子供達も楽しみにしているんだから。
家族間でちょっとした問題が生じて、普段は何もしない夫がやる気になるという内容です。
愚者も一得の類義語
「愚者も一得」の類義語には、「愚者も千慮に一得有り」「愚者も千慮」などの言葉が挙げられます。
愚者も一得の対義語
「愚者も一得」の対義語には、「千慮の一失」「河童の川流れ」「麒麟の躓き」「孔子の倒れ」「弘法にも筆の誤り」などの言葉が挙げられます。
愚者も一得まとめ
「愚者も一得」は愚かな者でも時には素晴らしいアイディアを出して周囲に役立ったりする事の喩えです。本来は役立たずだから愚か者ですがそれでも時には知恵を発揮するので、頭ごなしに意見を聞き入れないのは良くないとも受け取れます。