手塩に掛ける(てしおにかける)
「手塩に掛ける」とは「自らが率先して愛情を注ぎ大切に育てた事」です。昔のホームドラマでは、嫁ぐ娘を前にしたり或いは反抗的な娘の態度に、父親や母親が涙を堪えながら「手塩に掛けて育ててきたのに…」といったセリフがよくありました。それだけ大事で大切に育ててきたのに、自分の元を離れたりするのが寂しくて仕方がないのでしょう。そんな愛情の尺度のような言葉である「手塩に掛ける」の解説となります。
手塩に掛けるの意味とは
「手塩に掛ける」の意味は以下の通りとなります。
(1)自ら色々と世話をして大切に育てた事。
(2)手に掛けて養育する事。
(3)我が子や盆栽など、時間をかけて世話をしてきた大切な宝物などの事。
”手塩”は「不浄を払う為に食膳に添えた少量の塩」「手ずから世話する」「手塩皿の略」、”掛ける”は「高い所にぶらさげる」「物を他方へ渡す」「自分で直接する」「物で全体を覆う」「時間や労力を使う」等々で、自ら直接世話をするのが「手塩に掛ける」です。諸説ありますが一説によると、食事をする際に自分で塩加減を調整して好みにするのが「自分で塩を掛ける」で、それが変化して最終的には「手塩に掛ける」になったと言われています。当初は食事でしたが、それが我が子や盆栽などで使う事が多くなり、現在は趣味などでも丹誠を尽くして作った物や手間暇掛けた物に代名詞のように「手塩に掛ける」「手塩に掛けてきたのに」と使われています。よって、きちんと育て上げた・養成成功・人に見せても恥ずかしくない・立派に育てたといったニュアンスも込められています。
手塩に掛けるの由来
「手塩に掛ける」の由来は残念ながら不明ですが、文献としては劇場音楽「浄瑠璃」の「御所桜堀川夜討」(1737年)などに文言が記されています。
手塩に掛けるの文章・例文
例文1.手塩に掛けて育ててきた娘が結婚をする事となり、ホッと安心したのと同時に寂しさから胸が張り裂けそうだが本人の前では普通に振る舞っている。
例文2.唯一の趣味は自家製漬物で1日に1回は必ずぬか床を混ぜるほどマメだが、そんな手塩に掛けたものを一人で寂しく食するのも味気ない。
例文3.アイドルにお金を費やすのは普通の感覚だとバカバカしいが、ファンにとっては応援している形を表現する大事な行為で売れ始めると手塩に掛けて育てた実感が得られる。
例文4.手塩に掛けても結局は餌をやる時しか懐かないので、もうペットを飼うのは止めようと思う。
例文5.ロールプレイングゲームで手塩に掛けて成長させ強くなったキャラクターが、課金でレベルアップさせたキャラに一瞬でボロ負けするのは現実社会を如実に表していて、この世は金が全てである。
大切に育てたとして「手塩に掛ける」を使った例文です。
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手塩に掛けるの会話例
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何いつまでも泣いているの?
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だって私達が手塩に掛けて育ててきたワンチャンとお別れだよ。
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仕方がないよ。今度は社宅に引っ越しで、そこはペット禁止だから。
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それでも酷くない? あなたは愛犬よりも仕事が大切だっていうの? バカ―。
引っ越しで愛犬を手放す事になった夫婦の会話です。
手塩に掛けるの類義語
「手塩に掛ける」の類義語には、「面倒を見る」「目をかける」「寵愛する」「溺愛」「乳母日傘」「過保護」などの言葉が挙げられます。
手塩に掛けるの対義語
「手塩に掛ける」の対義語には、「粗末」「雑に扱う」「手荒」「邪険」などの言葉が挙げられます。
手塩に掛けるまとめ
「手塩に掛ける」は我が子などを自ら世話して大切に育てる事です。最も多い使われ方は、父親が大切に育て上げた娘が結婚する事になり「手塩に掛けた娘が嫁ぐ」「手塩に掛けてきた娘が嫁ぐ」といった形になります。それ以外でも愛情を持って育てた盆栽など趣味的な事でも用いられますが、男性が好んで使う印象がある言葉となっています。