機微(きび)
日本語には「行間を読む」ニュアンスの言葉が多くあります。物事をはっきり言うのではなく、感覚的に表現する言葉です。「機微」という言葉は、まさにそんな日本語の表現の繊細さを良く表している言葉です。説明するのも難しい言葉ですが、使い方や類義語を見ていくことで、その意味を確かめてみましょう。
機微の意味
機微とは「表面ではわかりにくい心や物事の動き」という意味を持っています。自分ですら気づきにくい感情の揺れ動きや、非常に繊細な物事の仕組みや移り変わりを表します。生きていると、ぴくっと心が動く瞬間があります。「雨が降っていると、もう吹っ切れたはずの昔の失恋を思い出し、ふっと物悲しくなる」というふとした時の心の動きや、「本当は気付いてほしいけれど、でも隠したい気持ちもあってうそを言ってしまう」というようなあらわにならない感情の動きなどは「心の機微」といえるかもしれません。機微は物事の変化に対しても使える言葉です。政治や経済、環境の微妙な変化は、渦中にいると気がつかないものですが、あとから歴史を振り返ってみると大きな変化をもたらしていることがあります。そのような移り変わりも機微といえます。「機微情報」という使い方もあります。これは上記2つとは違い、「デリケートな個人情報」のことを指します。
機微の由来
機微という言葉を分解してみると、「機」=物事の起こるきっかけ、「微」=ごく小さい、かすか、という意味が合わさった言葉です。ごく小さい動き、見逃してしまうような物事の小さなきっかけを機微というのですね。
機微の文章・例文
例文1.部長のさりげない人情の心の機微に触れる
例文2.あの人は言葉巧みに心の機微をうがつ人だ
例文3.あの時つるんでいた三人組がそれぞれ別分野に進んでいったことを思うと、運命の機微を感じる
例文4.政権交代の機微をうまくとらえ、立候補した
例文5.あの時は忙しすぎて、息子の心の機微にうとく、向き合ってやることができなかった
例文のように、機微には様々な言い回しがあります。さりげない、微妙なやりとりの中に機微を感じ取るものですね。
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機微の会話例
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この前はありがとう。妹も随分と明るい表情に変わったよ。
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いいえ、とんでもない。私なんて、妹さんの話を聞いてるだけです。何もしてませんよ。
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いやいや、妹が「恵子さんは丁寧に質問してくれる。それで、わたしも自分の気持ちに気づける」と言っていた。妹の心の機微をうまくとらえてくれている証拠だよ。
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そうならいいのですが。
上の会話では、人の心に丁寧に向き合うことについて話しています。心の機微が無視されず、優しく取り扱われると、人は人に心を開くのかもしれませんね。
機微の類義語
機微の類義語としては「微妙」「隠微」などが挙げられます。いずれも表面上にはなかなか現れない様子を表した言葉です。
機微まとめ
「機微」という言葉について見てきました。日常会話で使うことはあまりありませんが、日本語独特の美しい表現だといえますね。