爪の垢を煎じて飲む(つめのあかをせんじてのむ)
「爪の垢を煎じて飲む」とは「爪垢を薬草のようにして飲む事から、優れた人にあやかる喩え」です。普通の感覚なら仮にどんなにその人が偉大だとしても、他人の爪垢などは見たくもないものですが、それを「煎じて飲む」とするのですから、喩えだとしても随分と突拍子もないものです。如何にも東洋医学的な考えだとする一方で、憧れの相手の一部なら何でも欲しい。それを体内に取り組むと自分も同じように成れるというのは現代でも通じるところがあるのかも知れません。それでは「爪の垢を煎じて飲む」の解説となります。
この記事の目次
爪の垢を煎じて飲むの意味とは
「爪の垢を煎じて飲む」の意味は以下の通りとなります。
(1)優れた人の爪の垢を煎じて薬として飲み、何とかあやかろうとする喩え。
(2)各段に優れた人の爪垢を分けてもらい煎じて飲む事で、その人に近付いたり良い影響を受けた気になる事。
”爪”は「手や足の指先に生える角質」、”垢”は「汗や脂などが混ざって皮膚表面に付く汚れ」「水垢や湯垢」「心身に宿った汚れ」、”煎じて”は「茶や薬草などを煮詰めて成分を取り出す」、”飲む”は「飲食物を体内に送り込む」「吸い込む」などで、これらを合わせて本来は爪の垢という汚い物でも優れた人のものなら別としてお茶のように煎じて飲みあやかろうとする事です。かつては実際に飲んだという言い伝えもありますが、現在は飽く迄も喩えとして優れた人に近付きたい思いからの言葉となっています。要するに憧れの人と同じようになりたい願望であり成功したい強い気持ちから、体の一部で最も不要とされる爪垢を分けてもらい、薬草のように煎じて飲めば何かしらの良い効果があると信じる思い込みからの行動です。現在は仕事や学習能力などが劣っている人に叱咤激励で使ったり、馬鹿にするような嫌味で使うのがよくあるパターンです。また、自ら尊敬している人に用いる場合もありますが、冗談のようにしないと不気味に思われるので注意が必要です。
爪の垢を煎じて飲むの由来
「爪の垢を煎じて飲む」の由来は残念ながら不明ですが、文献としては近代日本を代表する小説家・菊池寛の著書「仇討三態」(1921年)などに文言が記されています。
爪の垢を煎じて飲むの文章・例文
例文1.唐突に友人が私の娘の爪の垢を煎じて飲みたいと真顔で言い出し、いくら酒の席とはいえ冗談が過ぎるので、それから疎遠になったら風の噂で警察の世話になったと聞き、あの時は娘の爪垢と嘘を吐き私のをあげとけば真人間になったのにと後悔した。
例文2.仕事ができないので、週に一度は仕事ができる同僚から嫌味のように「俺の爪の垢を煎じて飲むか」と嫌味を言われるが、媚び諂う情けない笑顔をマスターしているので難なく対処している。
例文3.今時女性社員に威張ってお茶汲みをさせていると、爪の垢を煎じて飲むの現代版として唾入りや布巾を絞った汁入りコーヒーなどを飲まされている恐れがある。
例文4.爪の垢を煎じて飲みたいほど憧れの人物がいる人は逆に羨ましいと思えてしまう。
例文5.「爪の垢を煎じて飲む気持ちで仕事ぶりを見て勉強しています!」と媚を売っておけば、上司や先輩からの評価は高くなるのでチョロイものだ。
相手に媚びたり不気味な男として「爪の垢を煎じて飲む」を使った例文です。
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爪の垢を煎じて飲むの会話例
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ごめん。料理も洗濯も掃除も終わっていない。
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ちょっとあなた、何やっているの? 偶の休日だからゆっくりしてきなって言うから、家事を任せて羽を伸ばしてきたら、何も終わっていないんじゃない。
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子育てをしながら家事をするって意外に大変なんだな。今回で身に沁みたよ。
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少しは私の爪の垢を煎じて飲んだらどうなの。まったく。
夫に家事を任せて出掛けて帰ってきたら、何も終わっていなくて呆れる妻という内容です。
爪の垢を煎じて飲むの類義語
「爪の垢を煎じて飲む」の類義語には、「右へ倣え」「顰に倣う」「鸚鵡返し」などの言葉が挙げられます。
爪の垢を煎じて飲むまとめ
「爪の垢を煎じて飲む」は爪の垢という汚いものを貰い飲むほど、その人にあやかり少しでも才能や能力で近付こうとする意味合いです。そこから、優れた人の爪垢を飲めばまるで自分も能力が上がったとする喩えで、仕事などの人間関係で何かと使われる言葉となっています。能力ない者に叱責するように言う場合は見下しや軽蔑、自ら能力ある者に言う場合は媚びやお世辞となり、どちらにしろあまり素直に喜べる言葉ではないのが現代の解釈ではないでしょうか。