監護権(かんごけん)
みなさんは「監護権」という権利をご存知でしょうか。正式には「身上監護権」といいますが、離婚の話題でよく出る「親権」を構成する二つの権利の内の一つです。子供と共に生活をし、身の回りの世話や教育を与え、肉体的にも精神的にも成長を促す権利であり、また義務でもあります。子供を持つ夫婦の別居や離婚の際に必ず話し合うことなので、詳しく解説していきましょう。
監護権の意味とは
「親権」=「財産管理権」+「身上監護権」ですので、「監護権」というのは「親権」から子供に関する「財産の管理」を除いた権利のことを指します。
詳しく説明すると「身上監護権(民法820条)」には下記の権利義務が含まれます。
・居所指定権(民法821条)居所を指定する(実質的には一緒に暮らす)権利義務
・懲戒権(民法822条)教育上必要な範囲内の懲戒やしつけをする権利義務
・職業許可権(民法823条)働くことに関して許可する、または許可を取り消したり制限する権利義務
・身分行為の代理権と同意権(民法787条または797条)婚姻や離婚などの身分行為を行う際に同意して代理手続きをする権利義務
「身上監護権」は名称に「権」とありますが義務でもある為、怠たり子供に危険が生じた場合は保護責任者遺棄罪で処罰されることがあります。
監護権の由来
近年、親としての権利の濫用とも見られる児童虐待の増加により、平成23年から民法の一部の見直しが行われ平成24年4月1日に施行されました。
監護権に関わる箇所で、離婚後の監護に関する事項の定め等(766条)・身分行為の代理権に含まれる15歳未満のものを養子とする縁組(797条)・「身上監護権(820条)」・懲戒権(822条)・親権喪失について(834~836条)・未成年後見人について(840~842、849、852、857条)が改定されました。
改定の概要は「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(766条)や「子の利益のために」(820条)という文が追加され「子供の利益の為の権利義務」であることを強調したこと、懲戒(822条)について「820条の規定による監護及び教育に必要な範囲内で」とすることで虐待などの防止に努めたこと、834~836条で「虐待又は悪意のある遺棄があった場合は審判を行い親権喪失・停止、または管理権の喪失を家庭裁判所ができること」と示したこと、子供の利益の為の「未成年後見人」について細かく取り決めたことです。
いずれも「子供をより強く守るため」の改定と言えるでしょう。
監護権の文章・例文
例文1.親権は私が持ちますが海外への転勤が多い為、監護権者は妻としました
例文2.監護権は親権の一部なので通常は分けませんが例外的に分けることも可能です
例文3.親権や監護権について長期にわたって父母で折り合いが付かず、子供に不利益が出た場合も親権と監護権を分けることがあります
例文4.監護権者の手続きは親権者の指定や変更の手続きとほぼ同じです
例文5. 夫婦間で折り合いが付かず家庭裁判所で判断する場合、基準は愛情や意欲・経済力・居住や家庭の環境・子供の年齢や性別などとなります
親権者と監護権者の違いは、監護権者の決定は離婚の要項に含まれていないので離婚後に監護権者を決めることも可能な点と、別居する場合は父母どちらが育てるのか決める必要があるので離婚前に監護権者を決めることもある点です。
監護権の会話例
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どうしても私が監護権を取りたいのですが、父親が取ることは難しいでしょうか?
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そうですね。実際は母親が有利だと言われています。監護権ということはお子様と一緒に暮らしたいということでしょうか?
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はい。どうしても一緒に住みたいのですが、どうすれば私が監護権者になれるのでしょうか?
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総合的に判断されますので、今までご主人が奥様よりも熱心に多くの時間を育児に費やしてきた、奥様によってお子様に悪影響が出ていた、離婚後についてもご主人様のほうが圧倒的に経済力や生活環境が良いなど多角的に主張すると認められる可能性があります。
父母の希望よりも子供の利益が最優先されます。
子供が15歳以上の場合は家庭裁判所が本人の意向を聞かなければいけないので、監護権について子供の意思が重要になります。
監護権の類義語
「監護権」は「身上監護権」の事ですので、同義語は「身上監護権」です。
監護権まとめ
昔は珍しかった離婚も最近では「結婚した3組に1組の夫婦が離婚する」と言われています。別居や離婚は子供がいる家庭ではハードルが高いことですが現状増加傾向にあります。婚姻中でも別居や離婚でも、最優先されるべきは子供の心身と成長に対する利益です。監護権についてもその点を重視して決め、決定後も行使していかなければいけませんね。