郷愁(きょうしゅう)
「郷愁」とは「故郷や昔を懐かしみ物思いに耽たりする感情」です。人とは誰もが老いていくので、そこで思い出すのは全盛期である若かりし頃や幼少期の家族と過ごした楽しい時代とされ、また、現在に不満があるほど昔の記憶は美化されるとも言われています。地元の料理を食べたり、懐かしい写真を見たり当時のヒット曲を聴く等の何かしらのスイッチが入り「郷愁」を抱く事も多々あり、逆に言うなら人というのは昔の思い出があるから励みとして現在も生きていけるのです。それでは「郷愁」の解説となります。
郷愁の意味とは
「郷愁」の意味は以下の通りとなります。
(1)故郷を懐かしく思う気持ち。
(2)年を重ねて昔を懐かしく思ったり、(戻りたいと)惹かれる気持ち。
(3)過去や昔を美化するなど思いに耽る事。
(4)「ノスタルジア」「ノスタルジー」「懐郷」「望郷」等々も同義。
「郷愁」は幼少期を過ごした故郷や昔を懐かしむ気持ちなので、一般的にはある程度の年齢に達して余計に思い描く独特の感情の事です。10代でもそんな気持ちになる事はありますが、重みという点から「郷愁」という表現が相応しいのは人生の折り返し地点を過ぎた40代や50代以降の世代が相応しいようです。例えば、お酒を飲みながら昔の家族や田舎が写る写真を眺めると、途端にタイムスリップをするように様々な光景がフラッシュバックして、そんな一時こそ「郷愁」と言えます。また、転勤や離婚など一人で生活をするようになり、寂しさから夜中などふいに懐かしい感情に縛られるのも「郷愁」です。さらに涙を流すようなら完全で、思い出が大事で仕方がないのでしょう。人とは、現代に不満があり楽しくないと余計に昔が輝いていたと「思い出補正」をするもので、本当は昔もその時を不満に思っていたのですが、そんな感情は忘れてしまい、良い思い出ばかりが強調されるのです。それでも誰もが若さには魅力があり、自分でもそんな特別な力を持った時代があったと思いたいのです。だから現在を憂いているほど、昔を懐かしみ美化する「郷愁にかられる」事が増えてしまいます。
郷愁の由来
「郷愁」の同義語であり由来とされる「ノスタルジア」は、1688年にスイスの精神科医・ヨハネス・ホーファー氏が編み出した俗語であり概念です。ギリシャ語の「nostos」(帰郷)と「algos」(心を痛み)を合わせた「ノスタルジア」は元々は「故郷に帰れない成人特有の心の痛み」でしたが、時代が経過する毎に精神病的な扱いは弱まり、その代わりに故郷を懐かしむ気持ちとして定着をしていきました。
郷愁の文章・例文
例文1.東京で暮らし始めて早10年、普段は地元の事などはまったく思い出さないが、稀に実家が野菜などを送ってくると郷愁を感じて物思いに耽る。
例文2.動画サービスを利用して昔の名作を観賞していると、急に郷愁にとらわれて中身がまったく頭に入ってこなくなる。
例文3.彼女が出来ると俺のルーツを辿る旅として母校などを一緒に巡るが、結局は自分だけ郷愁を意識して相手は無関心となり別れてしまう。
例文4.貧相なコロッケを食べると、貧しい子供時代がトラウマとなって過ぎるのでなるべく避けてきたが、最近は郷愁を抱けると気に入っている。
例文5.心が弱いから郷愁を抱きメソメソし、時々は寝込むほど昔の思い出から離れる事が出来ない。
地元や昔の懐かしさなどで「郷愁」を使った例文です。
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郷愁の会話例
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誰と電話していたの?
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中学生時代の友達。もう10年以上も連絡取り合っていなかったから、びっくりしたけど…、やっぱりいいものね。
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思い出を共有しているから、懐かしさが込み上げるよね。どう、郷愁を感じた?
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うん。今度会う約束もしたの。あ、女友達だから安心してね。
妻が懐かしの友人と電話をして「郷愁」を抱くという内容です。
郷愁の類義語
「郷愁」の類義語には、「旧懐」「ホームシック」「追想」「追慕」「思郷」などの言葉が挙げられます。
郷愁の対義語
「郷愁」の明確な対義語はありませんが、反対に近い表現となるのは「未来志向」「将来志向」「現実的」「現実主義」「ドライ」「実学主義」などの言葉が挙げられます。
郷愁まとめ
「郷愁」は昔の思い出が大事であったりと惹かれたり、地元や故郷を懐かしく感じる特別な思い入れの事です。年を重ねて大人になるほどそんな傾向になり、それぐらい若かりし頃の記憶とは心から離れないのです。一方で元々は「ノスタルジア」とした医学用語で、あまりにも「郷愁」を感じるのは後ろ向きとされ、現在に満足出来ていないからこそ昔を思い出すともされています。