驥尾に付す(きびにふす)
「驥尾に付す」とは「凡人でも優れた者に従えば成果を上げられる事」です。世の中には本当に優秀で成功する人と、そしてあまり優れていないのに同じように大きく成功する人もいますよね。そこには運や才能だけでは片付けられない、何か要領良く生きるコツのようなものが存在するはずなのです。その一つが今回の諺「驥尾に付す」ではないでしょうか? 自分であれこれ努力するよりも、まずは優秀な人に従うのが早道なのでしょう。それでは解説に入らせて頂きます。
驥尾に付すの意味とは
「驥尾に付す」の意味は以下の通りとなります。
(1)優れた人に従えば何かを成し遂げられる喩え。
(2)賢い者に従って行動すれば愚者でも志を遂げる喩え。
(3)その道の先人などを見習い行動する事を謙った表現。
(4)「驥尾に付く」「蒼蠅驥尾」も同義。
”驥”は「一日に千里走る名馬」「駿馬」、”尾”は「尻尾」、”付す”は「ついてゆく」「従く」「添える」で、名馬の尻尾に捕まり付いていくのが「驥尾に付す」です。元々の俗伝では、青蝿が名馬の尻尾に捕まり一日に千里もの彼方に行った事とされ、そこから、才能ない者や愚者でも才能ある者について行けば何かを成し遂げるといった喩えとなります。また、自らを謙った表現としても有名で、自分に才能や能力があっても「先人のお陰」と謙遜した表現となります。ある意味で賢くて巧みな処世術でもあるので、世渡り上手・金魚のふん・長い物に巻かれる等々と同じような言葉であると理解できます。さらに言えば、元々の俗伝からも、ただ尻尾に捕まっているだけでまったく走っていない事からも、努力をしなかったや最小限の努力で結果を得た際に用いる言葉でもあります。
驥尾に付すの由来
「驥尾に付す」の由来は、中国前漢時代の歴史書「史記」の一文「顔淵は篤学なりと雖も、驥尾に付して行い益々顕る」となります。
驥尾に付すの文章・例文
例文1.学生時代から驥尾に付す目利きだけは自信があり、誰と付き合えば自分が有利になるか熟知していた。
例文2.新人議員などは最初の派閥選択で驥尾に付すが試され、そこで上手くやれば後は順当に大臣になるのも夢ではない。
例文3.「驥尾に付しただけです」と謙遜して答えたが、内心ははらわたが煮えくり返りいつか虫けらのように葬ってやるとエリートのキャリア官僚が憤った。
例文4.能力ある者よりも金魚のふんのように驥尾に付す者が出世するのは、政府や五輪組織委員会を見れば一目瞭然だ。
例文5.「まだまだ若輩者です。父の後姿を見て驥尾に付しただけです」と答えておけば、二世として大抵はその場が上手く収まると学んでしまった。
処世術として「驥尾に付す」を使った例文です。
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驥尾に付すの会話例
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おめでとう。これで店長に昇進したんだよね。
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ありがとう。でも、私に実力があった訳ではなく、前の店長が素晴らしい人だったから。その人の驥尾に付した結果なだけよ。
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いやいや、大したものだよ。でも、これでまた帰宅する時間が遅くなるんだよね。
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そうね…。歴代の店長も数年持たずに体を壊して辞めていっているから、私も今から不安だわ。でも、仕事をしないと生活が厳しいし…。大変な世の中ね。
店長に昇進した妻を祝う夫婦の会話です。
驥尾に付すの類義語
「驥尾に付す」の類義語には、「蒼蠅驥尾に付して千里を致す」「小異を捨てて大同につく」「後塵を拝する」などの言葉が挙げられます。
驥尾に付すの対義語
「驥尾に付す」の対義語は厳密にはありませんが、反対に近い意味となるのは「鵜の真似する烏」「人真似すれば過ちする」などの言葉が挙げられます。
驥尾に付すまとめ
「驥尾に付す」は偉人や先人など優れた者に従えば物事を成し遂げられる喩えです。蝿が馬の尾に捕まっただけで一日に千里も移動した事が由来なので、優れた者を選択する洞察力の巧みさが重要と説いています。また最小限の努力で最大の結果を得るとも解釈できます。