モラルハザード(Moral Hazard)
「モラルハザード」とは「道徳・倫理の欠如で、安全対策があると逆に注意散漫になる事」です。これは保険業界などで一般的な考えですが、最近では他にも企業のコンプライアンス違反、政治家や公務員などの不祥事など様々なルール違反や気の緩みが含まれるようになっています。道徳や倫理の欠如という直訳が独り歩きして、あれもこれも「モラルハザード」となっている現状は危惧すべきですが、現代はそれぐらい常識や高い倫理観が求められるのも事実です。それでは、解説に入らせて頂きます。
モラルハザードの意味とは
「モラルハザード」の意味は以下の通りとなります。
(1)直訳すると、道徳や倫理の欠如、道徳観を失うなど。
(2)ビジネス用語や保険・証券用語で、危険回避の手段によって逆に危機管理が薄れて、事故に遭う確率が高まる事。
(3)安全対策が逆効果となりリスクが上がってしまう事。
”モラル”は「道徳」「倫理」、”ハザード”は「危険」「リスク」「危険への概念」で、「モラルハザード」を直訳すると道徳の欠如・倫理の欠如となります。これだけではあまりにも漠然としていますが、一般的には保険業界などで用いられる専門用語の事です。例えば、自動車保険や生命保険、証券会社や金融機関、それから企業などで近年は何かと使われる事が多く、それぞれの業界で微妙にニュアンスは異なりますが要するに、守って貰える策がある事での安心感からタガが外れかえって事故やトラブルに遭う事と解釈できます。具体的な例としては、下記の通りです。
・自動車保険に加入したので万が一でも補償があると、運転が荒くなり事故を引き起こす。
・生命保険に加入すると、入院しても保険金が下りると自堕落になったり暴飲暴食になる。
・金融機関の過剰融資、損失の隠ぺいなど。
・失業保険や生活保護があるので、無理して労働する人が少なくなり失業者が増える。
・政治家の癒着や公務員が接待を受けるなど倫理違反をする事。
よって、一般人にとっては保険加入等による安心感からの倫理欠如、企業や政治家や公務員などは利益を最優先にして守るべきルールから逸脱している事です。元々は保険用語とされるので、政治家の癒着などを「モラルハザード」に該当するべきかは意見が分かれるようですが、単純に道徳の欠如とするなら意味としては間違いがないです。この様な背景から、人は弱い生き物なので、守る策を用意すると結果的には社会機能が歪んでしまうと指摘されています。
モラルハザードの由来
「モラルハザード」は元々は保険業界で使われていた専門用語で、それが特に日本においては他の業界や分野でも用いられるようになったとされています。発祥時期は様々な説がありますが、始まりは1600年代の欧米とされ、その後は1700年代になると数学者が使い始め、1800年代にイギリスの保険業界が使うようになったと言われています。
モラルハザードの文章・例文
例文1.火災保険に入っているから寝タバコも安心だと笑顔で言う知人は、典型的なモラルハザードタイプで正直付き合うのが怖い。
例文2.金融機関にモラルハザードがあれば、これほど消費者金融を乱立しないだろう。
例文3.政府や国は自分達である議員や公務員の待遇改善や報酬を上げる事には熱心だが、失業保険や生活保護を上げようとは思わず、それどころかあらゆる手を使って増税し、これほど堂々とモラルハザードをするのも厚かましいものだ。
例文4.日経平均が3万円台突破と浮かれているが、日銀が購入して支えているだけで、なぜモラルハザードと強く訴えないのか不思議で仕方がない。
例文5.年会費無料や初月無料といった企業の戦略は、消費者を騙す常套手段でありそれこそモラルハザードの概念などは微塵も感じさせない。
「モラルハザード」を企業や金融機関などに使った例文です。
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モラルハザードの会話例
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今月も赤字かなー。給料が足りない!
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私は同じぐらいの給料ですけど、生活する上では十分ですよ。どうしてそんなにお金がないんですか?
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それが、本当に無駄遣いはしていないんだよ。でも、俺は保険に多く加入しているんだよね。いざって時に心配でしょう。その支払いがあるから、どうしても生活がカツカツになるんだよ。
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うーんまあ、保険があると安心はしますからね。でも、その安心感で事故に遭ったり生活が苦しいなら本末転倒だしモラルハザードですよね。
給料が少ないと嘆く職場男性に正論を言い放つ同僚女性の会話です。
モラルハザードの類義語
「モラルハザード」の類義語には、「道徳的危険」「デカダンス」「道徳的退廃」「腐敗」「墜落」などの言葉が挙げられます。
モラルハザードまとめ
「モラルハザード」は保険に入った安心感から気が緩んだり実際に事故や病気になるなど、守る術がある事で逆に注意や意識が弱くなってしまう「道徳や倫理の欠如」の事です。元々は保険用語なので、自動車保険や生命保険などで使われるビジネス用語という側面が大きかったですが、最近は倫理観という観点から政治家や公務員などの個人として道義的なルール違反をしない事を求めたり、企業のコンプライアンスなどと絡めて使われる事も増えています。