キャスティングボート(Casting Vote)
「キャスティングボート」とは「二大政党の命運を握る少数政党や影響力を誇る人物となる政治用語」です。少々分かり辛い言葉ですが、簡単に言うなら大きな影響力を誇れる政党や人物ともなり、状況が混乱すればするほど最終決定ができるとして重要視されます。国政選挙や総裁選が近付けばメディアがこぞって「キャスティングボート」の政党や政治家がどこで誰なのかと取り上げたり、或いは職場の会議などでも割と使われる言葉なので、何となく耳に残っていると思いますが、それでは詳しい解説をさせて頂きます。
この記事の目次
キャスティングボートの意味とは
「キャスティングボート」の意味は以下の通りとなります。
(1)英語表記「Casting Vote」で、直訳すると「会議での議長決裁権」の事。
(2)政治用語で、二大勢力が均衡している時に第三勢力や第三党が勝敗を左右する決定権。
(3)政治用語から転じて、どちらにも決まらない時の決定する力やそんな力を握る人物などの事。
(4)影響力が大きい政治家や権力者にも使われ、最終局面で重大な役割を担う事から。
”キャスティング”は「演劇などの配役割り当て」「釣りでリールにつけた仕掛けを遠くへ投げる」、”ボード”は「投票」「投票権」「参政権」「選挙権」で、そこから主に政治用語として選挙や議会の法案を通す際などに用いられます。例えば、衆議院選挙が行われ二大勢力がどちらも過半数を獲得できないと仮定すると、第三勢力・第三政党がどちらかに肩入れをして連立を組めば過半数を獲得します。このような実質的には主役になり損ねた勢力が大きな影響力を誇るのが所謂「キャスティングボート」で、政治以外でも職場の会議で二つの案のどちらにも決まらない時の最終決定権であり、そんな力を持つ影響力ある人物も「キャスティングボート」と評します。また実際の使い方としては「キャスティングボートを握る」「キャスティングボートが明暗を分ける」「キャスティングボートを担う」といった形が多くなります。よって、本来は現在の公明党のように自民党という大所帯に対して、少数政党である公明党が連立を組み大きな影響力を誇るのが最も正しくしっくりくる使い方ですが、自民党内での総裁選ではさも陰から影響力を駆使して自らに都合良い総裁を選べる実力者を「キャスティングボート」と例えて表現しがちです。決戦投票に持ち込まれて上位二人で投票になり総裁が選ばれれば、後から「キャスティングボートを握っていた○○の影響力によるもの」といった解説や記事が必ず登場します。まとめると、現在は少数(政党)の影響力や決定権だけでなく、陰の実力者や権力者として大きな影響力を誇る人物でも「キャスティングボート」は使われます。
キャスティングボートの由来
「キャスティングボート」の由来は残念ながら不明ですが、文献としては小説家・徳永直の著書「太陽のない街」(1929年)などに文言が記されています。
キャスティングボートの文章・例文
例文1.公明党は今回の衆院選でもキャスティングボートを握ると自負しているだろう。
例文2.過半数や決戦投票がなければキャスティングボートという幼稚なシステムがこれほど影響力を誇る事もなかった。
例文3.老いた自民党の重鎮達がキャスティングボートをいつまでも握っているのだから、それは派閥も決してなくならないし議員定年制度が導入されるのはまず不可能だ。
例文4.斜陽産業の我が社は若手がどんなに面白いアイディアを出しても、重役達の顔色ばかり窺う部長や課長がキャスティングボートによって却下するので、仕事が出来る人はどんどん辞めていき、使いものにならない者だけが残り業績は当然悪くなる悪循環だ。
例文5.自民党が変われば、首相が変われば、野党が変わればと毎度日本が良くなる事を夢見ているようだが、どこの誰が総理になってどの政党が政権与党になっても日本のキャスティングボートを握っているのはアメリカであり未来永劫変わらない。
政治や職場などで「キャスティングボート」を使った例文です。
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キャスティングボートの会話例
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じゃあ、俺は唐揚げ定食にしようかな。そっちは何を食べるの?
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あなた、唐揚げはコレステロールが高いわよ。もっとヘルシーなものを注文しなさいよ。
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好きなの食べさせてくれよ。家計のキャスティングボートを握っているのは分かるけど、せっかくの外食なのにこれじゃあ、あんまりだよ。
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分かったわよ、唐揚げOKよ。その代わり、家に帰ったらジョギングしてきてね。
久しぶりにファミレスで食事をする夫婦の会話風景です。
キャスティングボートの類義語
「キャスティングボート」の類義語には、「キーマン」「職権」「権限」「力」「偉力」「コミッション」などの言葉が挙げられます。
キャスティングボートの対義語
「キャスティングボート」の対義語はありませんが、権力や影響力が無いとするなら「無力」「力不足」「弱者」などの言葉が挙げられます。
キャスティングボートまとめ
「キャスティングボート」は基本的には政治用語で、二大政党が拮抗して過半数を獲得できない時に第三勢力や第三政党がどちらかに肩入れする事による強い影響力や立場、また政権や政党内での影響力強い人物を「キャスティングボートを握る」とも評します。これら以外でも職場では会議で選択肢から最終決定する人物も「キャスティングボート」となります。