暖簾に腕押し(のれんにうでおし)
「暖簾に腕押し」とは「暖簾相手の腕相撲から、拍子抜けや張り合いがない喩え」です。そもそも暖簾相手に力を入れても仕方がないのですが、それは置いといて、無意味な事に対する皮肉めいた言葉が「暖簾に腕押し」で、当時は店に暖簾を掲げたり相撲というのはステータス的な言葉だったのでしょう。屋号として暖簾は必要不可欠、或いは新規店としての貫禄めいたもので、腕押しも腕相撲や腕力自慢を意味していました。そんな背景を察して「暖簾に腕押し」の解説となります。
暖簾に腕押しの意味とは
「暖簾に腕押し」の意味は以下の通りとなります。
(1)手ごたえが全く無く、拍子抜けや張り合いがない喩え。
(2)こちらの対応を無碍にして誠実に対応しない事から、埒が明かない喩え。
(3)暖簾と腕相撲をしても手応えがないので、転じて、力を入れても張り合いがない喩え。
”暖簾”は「軒先や店入口にかける布」「店の信用や格式」「屋号」、”腕押し”は「腕相撲」「互いに腕で押し合う遊び」「相撲」で、暖簾相手の腕相撲が「暖簾に腕押し」です。暖簾は布なので力を入れても無意味で勝負にならず、そこから、手応えや張り合いがない様を表す言葉となりました。要するに、勝負事は相手が同等程度だとどちらが勝つか分からず白熱しますが、明らかに実力差が離れていると勝敗は既に決まっているので白けてしまいます。よって、暖簾相手に本気で相撲(腕相撲)を取る者はいないので、無意味・相手にならない・意味不明・時間の無駄とも拡大解釈がされます。
暖簾に腕押しの由来
「暖簾に腕押し」の由来は残念ながら正確には不明ですが、文献としては小説家・織田作之助の著書「蛍」(1944年)などに文言が記されています。因みに”暖簾”は室町時代から使われ始めたとされ、その後腕力や強い男の代名詞でもある「相撲」から”腕押し”として、「暖簾に腕押し」が誕生したそうです。
暖簾に腕押しの文章・例文
例文1.令和世代は何かと暖簾に腕押しと揶揄されるが、軽はずみで詐欺に加担して出し子や受け子として嫌悪する昭和平成世代にいいように使われるのは情けない。
例文2.かつては息子との将棋やキャッチボールは暖簾に腕押しでお遊びの延長だったが、だんだんと成長するつれてこちらがまったく歯が立たず老いてゆくばかりの思考と体力が情けなくなった。
例文3.残り10分程度になり延長を断った後の投げやりなプレイ時間ほど暖簾に腕押しはなく、僅か1時間前はあれだけ欲望に駆られ元気溌溂だったのに、終焉が現実味を帯びるとプロも客も異様に冷めていく。
例文4.地震国家である日本を揺れ動かすのは、癖だらけな学者や気障な官僚に野心家な新聞記者だと分かっただけでも、今期のドラマは暖簾に腕押しとはならない収穫が僅かばかりあった気がするがすぐに忘れるだろう。
例文5.芸人とは若い時は笑いを尊いものとして舞台に立つが、売れ始めると事務所に飼いならされテレビ局に餌を与えられ最後は政府に牙を抜かれて、誰が見ても暖簾に腕押しな無様な姿を世間に晒して初めて栄光のゴールを切った事になる。
皮肉たっぷりに「暖簾に腕押し」を使った例文となります。
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暖簾に腕押しの会話例
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友人が勝手に俺の写真をSNSに投稿したから文句を言ったら…。
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どうなったの?
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全く話にならないんだよ。暖簾に腕押し、糠に釘って感じで…、今の時代はSNSに投稿するのは当たり前で、自分が撮ったのを投稿するのは問題ないの一点張りだよ。
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マナーがない人とは付き合いを改めないとね。
友人とのトラブルを彼女に相談する内容です。
暖簾に腕押しの類義語
「暖簾に腕押し」の類義語には、「糠に釘」「豆腐に鎹」「焼石に水」「泥に灸」「馬の耳に念仏」などの言葉が挙げられます。
暖簾に腕押しの対義語
「暖簾に腕押し」の対義語には、「大黒柱と腕押し」「打てば響く」などの言葉が挙げられます。
暖簾に腕押しまとめ
「暖簾に腕押し」は全く力が入らない暖簾と腕相撲を取っても意味がないので、そこから手応えがないや張り合いがない事です。また、埒が明かないや相手にならないとも解釈され、無意味な事の全般の喩えが「暖簾に腕押し」です。